生成AI研究室(36) H3のプロンプトは何語まで書けるのか——ローカル・API・Seedance 2.5で「長さ」の意味が違う

生成AI研究室(36) H3のプロンプトは何語まで書けるのか(アイキャッチ)

Xで流れてくるAI動画のプロンプトを見ると、表情の変化から衣擦れの音まで、びっしり書き込んだものがあります。あれをそのままローカルのMiniMax H3に入れると、どうなるか。当方の実測では、ある語数を超えると落ちます。一方で、短すぎればモデルが勝手に埋める。この「ちょうどいい長さ」は、同じH3でもローカルとAPIで違い、Seedance 2.5ではまた別です。

結論から言うと、プロンプトの長さは「誰が書き足すか」で決まります。 API版とSeedanceは、サーバー側がプロンプトを読んで構造化し、足りない所を補ってからモデルに渡す。だから短くてよい。ローカルのH3には、それをしてくれる人がいない。だから自分で350〜850語を書く必要があり、書きすぎれば落ちる。この記事は、その根拠を当方の実測と公式仕様で並べたものです。

目次

先に結論

書ける長さ誰が書き足すか短く書くと
ローカルH3(ComfyUI・open weights)当方の実測で350〜850語。969語で停止誰も足さない(自分かClaude Code)モデルが即興で埋める(〜120語)
H3 API(MiniMax公式)本文7,000字までH3-Context-IR(公式の別API)がプロンプトを構造化。H3-Maxはprompt_expansionで自動拡張(既定ON)向こうで膨らむ
Seedance 2.5(ByteDance)公式に上限の記載なし。1パス30秒までモデル側が補う1文でも破綻しない。ただし勝手にカットを割り、縦を選び、喋る(当方実測)

1. ローカルH3の「帯」——当方の実測

8月下旬から10月までに焼いた記録を、語数で並べるとこうなります。

語数結果
〜120語足りない。書いていない所をモデルが即興で埋める
350〜630語適正。8月23日に成功した本は全部この帯
630〜768語通る。728語(A40)、768語(1.0MP・20ステップ・2本)
841〜850語完走。10月の第33回・第35回の4本(M5 Mac・0.6MP・12/20ステップ)
969語停止。クラウドの96GB級GPUで、モデル初期化に17分33秒かかったあとGPU使用率0%のまま止まり、ComfyUIが応答しなくなった。VRAMは86.8GB/97.9GB(89%)まで上がっていた(通常の本は82.6GB)

969語の本で冗長だったのは、「技の段階分解を3技すべてに書いた」ことでした。見せ場の1技だけ分解して、残りは1行にすれば、同じ内容が600語台に収まります。

停止の原因は断定できていません。 記録には「条件付けテンソルが長くなった分がそのままVRAMに乗った」と推定を書いていますが、32GBのM5 Macで850語が完走しているので、VRAM量だけでは説明がつきません。言えるのは「当方の環境で969語は落ち、850語は通る」という帯までです。

仕組みの側から言うと、H3のテキストエンコーダはQwen3-VL 32Bを50層に切ったもので、プロンプトは[系列長×5120]の条件付けテンソルになって動画側のモデル(DiT)に渡ります。長く書けば、この系列長がそのまま伸びる。長さが計算に効く構造ではあります。

第31回以降、当方は日本語の指示をClaude Codeに英語350〜850語へ書かせ、ノード側で850語を超えたら止める検査を入れています(完走実績856語の手前)。Claude Codeは放っておくと894語、912語、939語と書いてくるので、この検査は毎回のように効いています。

2. H3 API——7,000字と、公式の「書き足し」

MiniMax公式のAPI(2026年10月28日時点の仕様)では、プロンプトは1項目7,000字まで。語数ではなく文字数で数え、英語850語はだいたい4,500〜5,000字なので、ローカルの帯は余裕で収まります。

違うのは、公式が「書き足す側」の道具を用意していることです。

  • H3-Context-IR(別のAPI): テキストと参照画像・動画・音声を読み、「元の意図を保ったまま意味を豊かにした構造化表現」を返す。出力の例は、ショットごとの時刻付き記述、全体の音環境、音楽の節に分かれています。動画は作らず、プロンプトだけを返す。
  • prompt_expansion_mode(H3-Maxのみ): disabled / balanced / quality の3段階で、既定は balanced。つまり何も指定しなければ自動で膨らむ。
  • 参考に、前世代のHailuo 2.3/02では、プロンプト2,000字・prompt_optimizer既定ON・[Pan left]のようなカメラ命令15種、という作りでした。

Xで見る長いH3プロンプトの多くは、このContext-IRが返した構造化表現か、それに似せて書かれたものだと考えると辻褄が合います。ローカルにも同じ発想の道具はあって、lightx2v の「MiniMax-H3 Prompt Rewriter LoRA」(Qwen3.6-27B)は、短い文からショット別・時刻付き・音環境付きの英語を生成します。生成上限は2048トークン——当方のハングした969語より長い出力も出し得る設定です。当方のRewriter(第32回)は、これをClaude Codeで、語数の上限つきでやっているものです。

単価は768Pで$0.08/秒、2Kで$0.13/秒(第21回で48本)。

3. Seedance 2.5——1文でも通る。ただし

ByteDanceの公式発表(7月31日)では、1パスで最大30秒(2.0は15秒)、多段の延長で数分、参照は画像30枚・動画10本・音声10本まで、時刻を指定して区間ごとに指示でき、生成後に区間だけ差し替えられる。例として載っているプロンプトは長いものですが、長さの推奨も上限も書かれていません。fal経由のAPI仕様にも上限の記載はなく、尺は4〜30秒で既定はauto(モデルが決める)。720pで$0.473/秒、1080pで$1.164/秒です。

当方が8月に試したときの実測は、こうでした。

  • 1文のラフなプロンプトでも破綻しない。 実写と見分けがつかない1本が出る。
  • ただし書かないと、勝手にカットを割る(1カットのつもりが6カット)、aspect_ratio=autoが縦を選ぶ、音声を同時生成するので勝手に喋る。
  • 実写風の参照画像は、内容審査で拒否される(CLIでもブラウザでも同じ)。

つまりSeedanceの「短くていい」は、「書かなかった所をモデルが決める」の裏返しです。譲れない要求(ワンカット、横位置、喋らない)だけは、短くても必ず書く。

4. なぜ環境で違うのか

8月23日にクラウドの大きなGPUでH3を回したとき、Seedanceで通っていた短いプロンプトをそのまま持ち込んで、うまくいきませんでした。そのとき書き留めた原則がこれです。

プロンプトの粗さは、計算資源が足りない環境では隠れ、余裕がある環境で露出する。

機械が律速のうちは、統制の失敗は見えない。機械に余裕ができると、書かなかった所がそのまま品質として出てくる。Seedanceは書かなかった所をサーバー側が埋めてくれるので粗さが隠れ、ローカルのH3は埋めてくれないので露出する。同じことを「長さ」の側から言うと、Seedanceで通った1文はローカルH3には持ち込めず、ローカルH3で練った850語はSeedanceでは過剰(向こうが整理する)、ということになります。

5. ローカルで使いこなすなら——分割と委任

ローカルH3に「表情から衣擦れまで」を1本のプロンプトに全部入れようとすると、850語の壁に当たります。当方の答えは2つです。

  1. 分割する。 1本に全部書くから膨らむ。カット単位で、1本に1つの意図を書く。つなぎは第29回のタイムライン編集。直すときも、第35回のように1か所ずつ。
  2. 委任する。 350〜850語の英語を自分で書くのはしんどい。日本語で書いてClaude Codeに英語化させ、ノードが語数と書式を検査する。API版のContext-IRがやっていることを、手元で、上限つきでやる。

LoRAは絵と動きの傾向を変えるもので、1本のプロンプトに書ける量を広げるものではありません。長尺の助けにはなっても、語数の答えにはならない。語数の答えは、分割と委任です。

言えること、言えないこと

  • 言える: 当方の環境(M5 Mac・RTX 5060 Ti 16GB×2・クラウド96GB級)で、350〜630語が適正、850語まで完走、969語で停止した。H3 APIは7,000字で、公式に構造化・拡張の道具がある。Seedance 2.5は公式に上限の記載がなく、1文でも破綻しない。
  • 言えない: 969語の停止の原因(VRAM・エンコーダ・ComfyUIのどれか)。Seedanceの字数上限(アプリの入力欄が30,000字という第三者の観測はあるが、公式ではない)。H3 APIに短い文を投げたときの出来(未実測)。
  • 語数の帯は、当方の書式(節・ラベル・詳細記述)で測ったものです。書式が違えば帯もずれます。

まとめ

  • 長さは「誰が書き足すか」で決まる。ローカルH3は自分(かClaude Code)、H3 APIはContext-IRと自動拡張、Seedanceはモデル側。
  • ローカルH3は350〜850語。969語で止まった。
  • 短く書けるのは、書かなかった所を向こうが決めるから。譲れない要求は短くても書く。
  • ローカルで使いこなす答えは、分割(カット単位で1意図)と委任(日本語→英語をClaude Codeに、検査つきで)。

環境: MacBook Pro M5(32GB)・RTX 5060 Ti 16GB×2・クラウドGPU(RunPod)・ComfyUI・MiniMax H3。公式仕様はMiniMax(platform.minimax.io)とByteDance(seed.bytedance.com)・fal.aiの2026年10月28日時点の記載。参照: 第21回、第29回、第31回、第32回、第35回。

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