生成AI研究室(41) GPUをいっぱい挿すのは性(さが)らしい——2021年のマイニングリグと2026年のAI生成機

横置きのマイニングリグ。白いリングファン5連の前にRTX 3090が3枚(2021年9月)

古いiPhoneの動画が2本出てきた。2021年9月5日、畳の上に組んだマイニングリグが回っている。片方は白いリングファンを5つ並べた横置きの台にRTX 3090が3枚。もう片方はアルミフレームの3段棚に、RTX 3060 Tiが5枚とRTX 2080 Tiが2枚。下段には電源が2台。

横置きリグ。RTX 3090×3枚(2021年9月)
横置きリグ。RTX 3090×3枚(2021年9月)
アルミフレーム3段のリグ。RTX 3060 Ti×5+RTX 2080 Ti×2、下段に電源2台(2021年9月)
アルミフレーム3段のリグ。RTX 3060 Ti×5+RTX 2080 Ti×2、下段に電源2台(2021年9月)

今、同じ人間が同じ家で、RTX 5060 Ti 16GBを2枚挿したデスクトップでAI動画を焼いている。5年前と今で、GPUを何枚も挿す理由は同じに見えて、ルールがまるで違う。その違いを、この2本の動画をきっかけに整理しておく。

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あの時のルール——枚数と電力効率が正義

マイニングの計算は、1枚1枚が独立している。カード同士が話す必要がなく、CPUとやり取りする量もごくわずか。だから1枚あたりの接続はPCIe x1で足りる。x1スロットがずらりと並んだマイニング専用のマザーボードに、USBケーブルのライザーで1枚ずつ立てて、1枚の板に6枚、8枚と並べられた。動画の上段で基板がむき出しのまま立っているのが、そのライザー挿しだ。電源が2台載っているのは容量の問題というより、カードに挿す補助電源のコネクタ数が1台では足りないからだ。

評価軸は「1ワットあたり何ハッシュ出るか」と「何枚並べられるか」。壁は計算力ではなく、電気と熱だった。特にRTX 3090の発熱は別格で、Linux(HiveOS)でオーバークロックして回していたから、なおさらだった。最盛期は4台のリグを同時に回していて、自宅では収まらず、近くの安いアパートを一室、マイニング部屋として借りた。部屋選びの条件は2つ、電気の契約容量を確保できることと、光回線を直接引けること。その部屋も今は引き払っている。4台22枚で1GH/sに届いたころの電力契約や、夏に40℃を超えた部屋の話は、以前の記事(1GH/s到達の実録)に書いた。

2022年9月、イーサリアムがPoSへ移行(The Merge)してGPUマイニングの出番が終わり、板は全部手放した。

今のルール——1枚の帯域とVRAMが正義

2026年の2枚挿しは、数字だけ見ると小さい。RTX 3090は1枚24GBだから、3枚でVRAM合計72GB。今の5060 Ti 16GB×2は32GB。それでも生成AIの道具としては、今の2枚の方が圧倒的に強い。理由は2つある。

1つ目、VRAMは足し算にならない。動画生成モデルは1本の大きな計算で、モデルの重みと途中の計算結果が1枚のVRAMに載るかどうかで決まる。3枚を並べても「72GBのGPU」にはならない。2枚で分担させるには、層を分けて載せる仕組み(当方ではH3VMの2枚挿し)が要る。

2つ目、1枚あたりの帯域が効く。2枚で分担すると、カード同士とCPUの間を途中の計算結果が行き来する。マイニングでは問題にならなかったx1のライザーが、ここでは致命的になる。だからマザーボードは「CPU直結のx16が2本(x8+x8で動く)」で選んだ。その話は第38回に書いた。

実測では、同じ条件で1枚1,079.6秒かかった8ステップの生成が、2枚で484.6秒まで縮んだ(第39回)。枚数を増やして速くするという結果だけ見ると2021年と同じだが、中身は「並べる」ではなく「分担させる」で、分担の通り道の太さが速さを決めている。

2021年 マイニング2026年 AI動画生成
構成RTX 3090×3 ほか4台22枚RTX 5060 Ti 16GB×2
VRAM合計72GB(3090×3)32GB
1枚の接続ライザー(x1相当)で可CPU直結 x8+x8
効く指標枚数・電力効率1枚のVRAM・帯域
壁電力契約・排熱モデルが1枚に載るか・分担の通り道

手放して、また挿している

マイニングの板を全部手放したとき、GPUの山とはもう縁が切れたと思っていた。4年後、理由を変えて、また2枚挿している。しかも今度は、前の構成で生成中に止まったデスクトップをCPUとマザーボードごと組み直す羽目になった(第37回)。

懲りないというか、性(さが)というか。昔からGPUをいっぱい挿して動かすことをやっていたのだと、2本の動画を見て思い出した。違うのは、今は「何枚並べるか」ではなく「1枚に何を載せ、2枚の間をどう通すか」を考えていることだけだ。


関連: 第37回 / 第38回 / 第39回 / 1GH/s到達の実録(2026年1月)

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