生成AI実験室(14) 言葉で伝わらない動きは、15秒の絵コンテ動画にした——Blenderで作る参照動画

生成AI実験室 第14回 言葉で伝わらない動きは、15秒の絵コンテ動画にした——Blenderで作る参照動画

この連載では、AIで作った同じ人物に、某人気アニメ風の「ワイヤーで空を飛ぶ装備」を着けて、街の中を飛ばそうとしています。第11回では、装備の形を3Dモデルで固定しました。今回はその続きで、「動き」をどう伝えるかの話です。

目次

文章では、飛ぶ方向が伝わらなかった

生成した動画には、次のようなずれが出ていました。

  • ワイヤーが3本出る(装備の設定は、左右1本ずつです)。
  • 目の前の壁に撃ったのに、別の方向へ飛ぶ。
  • 飛んでいる途中で、進む向きが勝手に曲がる。

どれも「どこに撃って、どこへ引かれて、どこに降りるか」という位置の話です。文章で細かく書くほど長くなり、長くなるほど読み違えの余地が増えます。文章の長さが原因だったと確かめたわけではありませんが、言葉で詰めるのをいったんやめて、動きそのものを見本として渡すことにしました。

箱の街と、灰色の人形

Blenderで作った15秒の参照動画(v9)。箱の街と灰色の人形で、動きとカメラだけを決めてある(音なし)

Blenderで、道路の左右に箱の形の建物を並べただけの街を作りました。人物は、関節のある簡単な人形です。腰の左右に同じ形の射出口があり、そこから1本ずつ、合わせて2本のワイヤーが出ます。

見た目は作り込んでいません。この動画の役目は、動きと位置とカメラを伝えることだけです。人形を連載の彼女に、箱を廃墟の街に置き換えるのは、動画生成AIの側の仕事になります。

Blenderの操作は、AIのエージェント(Codex)に任せました。当方がしたのは、出てきた動画を見て、直してほしい所を言葉で伝えることです。使ったのは Blender 5.2 LTS です。

9回の作り直しで決めたこと

最初の版v1と9回目のv9の比較。v1は低い箱の街で、ワイヤーの太さは20mm、9秒。v9は高い建物で、ワイヤーは3mm、15秒・7カット、振り子3回のあと屋根に着地する
最初の版(v1)と、9回目(v9)
版直したこと
v1道路と箱の建物、人形、左右2本のワイヤー。狙う・撃つ・引かれる・着地、という基本の動き(9秒)
v2固定先を遠くした(前方6.8m→14.25m)。ワイヤーを細くした(20mm→3mm)。自分で跳ぶのではなく、腰から引かれる動きに直した
v3引かれるときに腕が後ろへ流れ、着地で前に出る動きを足した
v4建物を高くし、固定点を13mと16mの高さに上げた。離す・巻き取る・次を撃つ、を空中で繰り返す3回の連続にした
v5前方の廃墟に、高さ8.25mの屋根を足した。最後はそこに両足で降りて、膝と腰で受け止める
v6・v7冒頭に、4.8mの走り込み・見上げる・構える・引き金を引く、を足した。走るときの刀の向きを直した
v8カメラを7カットに割り、全体を15秒にした
v9飛んでいる間のカメラを、後ろ斜めから、顔が見える前方斜めに変えた

直していく中で、決めたことが3つあります。

体ではなく、腰が先に動く

ワイヤーは腰から出ています。引かれるのは腰で、上体と腕と脚は遅れてついてきます。最初の版は、自分の脚で跳んでいるように見えました。そこで、発進前に沈み込む動きを消し、肩と足が遅れる動きを強めました。

動きに時刻表を付ける

「撃つ」「離す」「降りる」を、何秒で行うかまで決めました。

時刻動き
0.00〜2.20秒4.8m走り込んで、止まる
2.20〜4.00秒見上げる、構える、狙う、引き金を引く
4.00秒1回目を撃つ(4.30秒で固定して、引かれ始める)
約6.52秒1回目を離す(6.90秒で2回目を撃つ)
約8.85秒2回目を離す(9.19秒で3回目を撃つ)
約11.60秒頂点を過ぎてから、3回目を離す
約11.88秒屋根に着地
13.00〜15.00秒立ち直った姿のアップ
横から見た動きの4コマ。1回目は約5.2秒で道路を離れる、2回目は約7.5秒、3回目は約10.4秒で固定点のほぼ真下を通る、約11.8秒で屋根に降りる直前
横から見た動き——振り子3回と、屋根への着地

固定点の下をくぐって、前へ上がります。最初の2回は、上がっている途中で離し、約0.2秒で巻き取って、次の2本に移ります。途中では着地しません。最後の1回だけは、ワイヤーを繰り出して長さを伸ばし、頂点を過ぎてから離します。

カメラも、動画の中で決める

15秒を7カットに割った一覧。カット1は正面から走り込み、カット2は見上げるアップ、カット3は前方斜めで腰から2本を射出、カット4は後方から全身、カット5は前方斜めから追う振り子3回、カット6は屋根の上から着地、カット7は前方斜めのアップ
15秒を7カットに割った一覧(v9)

15秒を7カットに割りました。文章では「前方斜めから追う」の一言でも、動画なら、どの高さから、どの距離で、何秒間追うのかまで決まります。飛んでいる間のカメラ(カット5)は、人物の腰を基準に、横3.3m・前3.8m・上1.6mの位置に置いています。顔が見える、およそ45度の角度です。

確かめたのは「入っているか」「隠れていないか」

出来ばえの判断を、見た印象だけに任せないようにしました。

  • 画面に入っているか: カメラを変えた129コマについて、頭の上・両足・両方の刀の先が、画面の中に収まっていることを確かめました。
  • 隠れていないか: カメラと頭の間に、建物が割り込んでいないことを確かめました。
  • 顔が見えているか: 人形の顔がカメラの側を向いていることを、向きの数値で確かめました。

動きの計算は、振り子と放物線をつないだ簡単なものです。体や服やロープをまとめて解く物理の計算ではありません。姿勢は、要所の時刻ごとに形を決めて、その間をつないだ動きです。見本として足りるかどうかは、生成してみないと分かりません。

できあがった動画は、1920×1080・24fps・360コマ・15秒・音なしです。

この動画をどう使うか

この動画を、動画生成AI(MiniMax H3)に「参照動画」として渡します。分担は次のとおりです。

  • 動画が運ぶもの: 動き、時刻、飛ぶ経路、構図、カットの切り替え。
  • 画像が運ぶもの: 人物の顔、衣装、装備。
  • 文章が運ぶもの: 7カットの時刻に沿った、短い動きの説明。

8月に小さな条件で試したときは、灰色の人形の動画を渡すと振り付けが伝わり、物の左右や前後、カメラの向きも保たれました。今回は、それを街とワイヤーに広げる試みです。

この動画を使った生成は、まだ行っていません。生成したら、次の点を見ます。

  1. ワイヤーが、細い2本のまま保たれるか。
  2. 撃った先と、飛ぶ方向が合っているか。
  3. 顔と装備が保たれるか。
  4. 7カットが、どこまでそのとおりに出るか。

結果は、うまくいかなかった場合も含めて、この連載で報告します。

連載の全体は記事マップに、これまでに出会った症状と対処はトラブル早見表にまとめています。参照動画の動きを写す話は第8回に書きました。


本記事の動画と画像は、Blenderで作った動作の見本(CG)です。AIのエージェントに操作させて作成しました。数値は2026年10月7日時点の当方の制作記録に基づきます。

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