前回、彼女が踊れるようになるまでの4日・30本を書きました。正直に白状すると、ああいうものは一度コツを掴むと、つい、また作りたくなります。というわけで二曲目です。題材は、同じグループのもうひとつの代表曲(例によって曲名は記しません)。そして彼女も衣装替え——今回は赤いロングのチャイナドレス。足首丈で、深いスリットの入った、前回の白い短丈とはまるで性格の違う衣装です。
今回の問いは1つ——あれは「一点もの」か、「型」か
前回の成功には、4条件のレシピがありました(タイムスタンプ付きの振付記述・時刻一致・人物保持の宣言・音声の宣言)。ただ、1曲で成功しただけなら、それは「その曲専用の一点もの」かもしれない。別の曲・別の衣装でも通るなら、初めて「型」と呼べます。二曲目は、お楽しみであると同時に、レシピの再現性テストでした。
結果: 30本が、5本になった
結論から。今回はその日のうちに、5本で本番に到達しました。内訳を書きます。
1本目は、あえて振付の文章記述ゼロで焼いた確認玉。結果は「動画参照だけでは弱い」——参照動画が振付を運び、文章が体を成立させる、という前回の結論が、別の曲でも同じ向きに出ました(1本での再確認なので断定はしません)。2〜3本目は、最安設定(低解像度・最少ステップ)での当たり見。プロンプトの構成が通るかだけを数分で確かめる、いつもの二段構えです。4本目が本番(高解像度・20ステップ)。そして5本目は、乱数の種だけを変えた再現玉——「当たりを引いただけ」ではないことを確かめる、前回と同じ対照です。
効率が6倍になった理由は単純で、前回の失敗が全部、今回の近道になったからです。たとえば参照動画。前回は「24fps表記なのに実質10fps」という罠に後から気づきましたが、今回は素材選びの段階で中身のコマを数え、最初から正味24fpsちょうどの参照を使いました。前回の罠は、入口で潰してあります。

新しい壁①: 衣装が変わると、「書くこと」が変わる
とはいえ、二曲目がただの消化試合だったわけではありません。新しい壁が2つ出ました。
ひとつ目は衣装です。今回の赤いチャイナドレスは足首丈で、左右に深いスリットが入っています。蹴り上げも跳躍もある振り付けを、この裾で踊らせる——ここで効いてくるのが、この連載で繰り返し出てくる原則、「書いていない部分は、AIが即興で埋める」です。裾とスリットの挙動を書いておかないと、モデルは平気で丈を短く作り替えます。
そこで、キャラクターシートの現物を見ながら、衣装の記述を詰めました。金の縁取り、足首丈、深いスリット、左腰の花の刺繍。じつはこの作業中、下書き段階のプロンプトに現物と違う記述(縁取りの色)が混ざっているのも見つかりました。文章だけで作業していたら、そのまま焼いていたはずです。衣装替えのたびに、現物とプロンプトを突き合わせる——地味ですが、これが新しい工程として増えました。

新しい壁②: プロンプトには「GPUごと固まる長さ」がある
ふたつ目は、思いがけない方向から来ました。プロンプトの長さです。
今回の曲は振付の時刻区間が13個あり、全部を丁寧に書くと文章がどんどん膨らみます。そして当方の環境では、プロンプトが長すぎると、生成が遅くなるのではなく、GPUごと固まります。メモリが限界まで逼迫し、処理が止まり、応答が返らなくなる——以前、実際に踏んだ現象です。以来、当方は「ここまでの長さなら通る」という安全域を実測で持っていて、今回はその上限ぎりぎりの勝負になりました。
ここで面白いことが起きました。文章を安全域に収めるため、AI(相談役のClaude)が出した案は「13区間をまとめて7区間に畳む」——情報を間引いて短くする、いかにもAIらしい要約です。当方はこれを採らず、13区間を全部残したまま、一文一文を簡潔な命令文に書き締めました。結果、AIの畳み版より短くなり、しかも振付の時刻情報はひとつも失っていない。この版で本番が完走し、安全域の上限記録も一段更新されました。要約で削るか、文体で削るか——今回は人間の編集がAIに勝ちました。相談役の名誉のために書き添えると、骨組み(書式と宣言まわり)はAI版がそのまま生きています。分業です。
正直な留保も3つ
例によって書いておきます。第一に、「動画参照だけでは弱い」の再確認は1本だけの結果です。第二に、再現玉は2本(乱数の種違い)での確認で、成功率と呼べる数字にはまだ遠い。第三に、今回の本番は参照動画と出力の縦横比がずれたまま焼いています(参照は縦長9:16、出力は2:3)。出来への影響がありうる点として、評価に添えておきます。
まとめ
要点は3つです。第一に、レシピは型になった。別の曲・別の衣装で、試行は30本から5本に減った——前回の失敗の記録が、そのまま今回の工程表になったからです。第二に、型にしても新しい壁は出る。衣装が変われば書くことが変わり、記述を厚くすればGPUが固まる長さの壁に当たる。壁の位置が変わるだけで、壁自体はなくならない。第三に、削り方には流儀がある。情報を畳んで削るAIの要約より、情報を保って文体を締める人間の編集が勝つ場面がある——AIと組んで作業する上で、これはけっこう本質的な発見だと思っています。
彼女の衣装部屋は、これで3着になりました。工房の連載は続きます。
本記事の内容は2026年9月上旬の当方検証(クラウドGPU環境)に基づきます。本記事中の人物の画像・動画はすべてAIによる生成物です。実在のグループ名・楽曲名は、権利への配慮から記載していません。本検証は個人の技術検証であり、当該グループ・楽曲・振付の権利者とは一切関係ありません。

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