Pump.funの卒業率は1%台——Bonding Curveの仕組みと、卒業前後で何が起きているか

Solana上で日々生まれるミームコインの大半は、Pump.funというひとつのプラットフォームから発行されています。多い日には1日4万件を超えるトークンが作られ、その98%以上は、誰にも買われないまま消えていきます。

私はこの市場を対象にした自動売買Botを開発しながら、半年ほど市場の挙動を観測してきました。本稿では、Pump.funの価格決定の仕組みである「Bonding Curve」と、トークンが次の市場へ移行する「卒業」の前後で実際に何が起きているかを整理します。派手な話ではありませんが、この市場に何らかの形で関わるなら、最初に押さえておくべき土台だと考えています。

Pump.funとは何か

一言でいえば、誰でも約0.02 SOL(数百円)でトークンを発行できるプラットフォームです。

従来のミームコイン発行では、開発者(dev)が自分で流動性プールを用意する必要があり、そのプールを引き抜いて逃げる「ラグプル」が構造的に可能でした。Pump.funは発行時に流動性プールを作らない設計にすることで、この古典的なラグプルを仕組みの上で防いでいます。

ただし後述するとおり、これは「安全になった」という意味ではありません。リスクの形が変わっただけです。

Bonding Curveの価格決定

Pump.fun上のトークンの価格は、板(オーダーブック)ではなく、数式で自動的に決まります。これがBonding Curve(ボンディングカーブ)です。

イメージとしては、コップに水を注いでいくゲームに近いものです。人々がSOLを入れてトークンを買うほど水位(時価総額)が上がり、売れば下がる。価格はコップの水量だけから機械的に計算されます。誕生の時点では仮想的な準備金だけがある状態で始まり、買いが入るたび恒積式(x·y=k)に沿って価格が上がり、時価総額が約$69,000に達するとBonding Curveでの取引が完了します。

この「卒業(graduation)」が本稿の主題です。卒業したトークンは、集まったSOLとともに通常のDEXへ移され、そこで初めて板のある普通の市場で取引されるようになります。

Bonding Curveと卒業の模式図
Bonding Curveと「卒業」の模式図(曲線は概念図)

なお、以前の卒業先はSolana最大手DEXのRaydiumでしたが、現在はPump.funが自前で運営するDEX「PumpSwap」への移行が標準です。古い解説記事(本サイトの過去記事を含みます)はRaydium前提で書かれているものが多いので、読み替えてください。

卒業率は1%台という現実

では、発行されたトークンのうち、どれだけが卒業に到達するのか。

複数の公開データが示す数字はおおむね一致していて、1.2〜1.4%前後、多く見積もっても2%未満です。私自身の観測期間中のデータでも、この水準から大きく外れたことはありません。

残りの98%以上はどうなるか。Bonding Curveの途中で買い手が途絶え、時価総額数千ドルのまま放置されます。取引履歴が数件で止まっているトークンが、毎日数万件単位で積み上がっていく——それがこの市場の実相です。

つまりPump.funは、宝くじの束が毎日4万枚発行され、当たり券が数百枚だけ混ざっている場所だと言えます。問題は、当たり券とハズレ券が発行時点ではほとんど見分けられないことです。

卒業の前後で、実際に何が起きているか

ここからは、Botで市場を定点観測して分かってきたことです。結論だけ先に書くと、卒業は「ゴール」ではなく、参加者の入れ替わりが起きる「関所」です。

第一に、卒業直前の帯には、卒業を狙い撃ちする自動売買勢が集中します。卒業ラインの手前で買い、卒業直後の流動性流入で売り抜ける戦略は広く知られており、この帯は個人の手動取引が機械と正面から競合する場所になっています。

第二に、価格チャートの「形」は、参加者の構成を映します。たとえば、買い手のユニーク数が増えないまま時価総額だけが吊り上がっていくトークンがあります。一人(または一つのBot)が複数回買っているだけの、いわば一人芝居です。人間がチャートを一目見て「不自然だ」と感じるパターンの多くは、オンチェーンデータ上の署名として定量的に記述できます。この分類は本サイトで今後、体系的に扱っていく予定です。

第三に、開発者(dev)の動きはトークンの生死に深く関わりますが、「devが売った=終わり」という単純な話ではありません。観測データの中には、devが発行直後に持ち分の一部を売却したうえで、その後大きく上昇したトークンが繰り返し現れます。逆に、devの売りが即死につながるケースも確かに存在します。両者を分けるのは売却の有無そのものではない、というのが観測から得た知見です(この弁別は当Botの中核ロジックに関わるため、詳細は別稿に譲ります)。

第四に、本当に大きく上昇するトークンの多くは、卒業後に本領を発揮します。卒業までの上昇はBonding Curveの構造上限($69k)に頭を抑えられているのに対し、卒業後は上限がありません。一方で、卒業後の市場は値動きの振れ幅も桁違いで、「平均的には損をするが、稀に極端な当たりがある」という宝くじ型の分布になります。期待値の議論と分布の議論を分けて考えないと、ここで判断を誤ります。

個人がこの市場に触れるなら

私はこの市場を投資先としてではなく、開発と検証の対象として扱っています。その立場から言えることは3つです。

  1. 仕組み(Bonding Curveと卒業)を理解してから触れること。価格が板ではなく数式で決まる市場は、直感が通用しない場面が多くあります。
  2. チャートの形の背後にいる「参加者」を想像すること。誰が買っているのか説明がつかない上昇は、疑ってかかるのが妥当です。
  3. 生活資金を持ち込まないこと。98%が消える市場です。これは比喩ではなく統計です。

本サイトはBot開発と検証手法の記録であり、投資助言ではありません。記事中の数値は特定期間の観測・公開データに基づくもので、将来の結果を保証しません。

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